本と珈琲のある暮らし

小説やビジネス書を好んで読みます。読書の感想や日々感じたことなどをここに記していきたいと思います。

神は何もしてくれないのか『沈黙』(遠藤周作)

 

 

目次

 

 

「神とは何か?」を考えさせられる物語

 

本書はひと言で言うと、

 

キリシタン弾圧が激しい17世紀初頭の日本を舞台に、外国人宣教師の苦悩をとおして、神とは何か?という問いを投げかけてくる物語

 

でした。

 

  • 歴史が好き、興味がある
  • 宗教(キリスト教)に興味がある
  • 暗い雰囲気の物語が好き
  • 考えさせられる、テーマのある物語が好き

という方には、楽しめる小説だと思いました。

 

 

過酷な状況でも神を信じられるか

本書の主人公であるポルトガルキリスト教司祭ロドリゴは、布教のため日本に渡る。

 

しかし、当時は島原の乱が起き、江戸幕府キリスト教を禁制とし取り締まりを強化していた。

 

何とか日本か辿り着き、運よくキリスト教徒が暮らす村で匿ってもらうこととなるが、それも長くは続かない。キリスト教徒への弾圧は厳しさを増し、非人道的な拷問を目にすることに。

 

そんな状況でも何もせずに沈黙を続ける神、キリスト。今まで信じ続けてきた神の存在さえも疑いはじめる。

 

ロドリゴが苦悩している場面をとおして、読み手も神の存在について考えさせられます。

 

 

たどり着いた結論(ネタバレ含む)

自身が棄教しない(転ばない)ことの代償に穴吊りという残虐な拷問にさらされる教徒たち。先に棄教したフェレイラにも促され、ついにロドリゴは踏絵に足をかけることに。

 

悲惨な状況においても、沈黙し続ける神に対して一時疑問を抱きそうになるロドリゴだが、転んだことさえも神からのお告げと解すに至ります。キリストは沈黙していたのではなく、一緒に寄り添って苦しんでいたのだと。

 

あくまでも神の存在自体を否定するには至らず、表向きは棄教するものの、内心では教徒であり続け、神を信じ続けます。

 

 

感想

ロドリゴの苦悩する様子から「神とは?」「宗教とは?」と、終始問いを投げかけられるようなお話でした。無宗教であっても興味深いテーマだと思いました。

 

また、江戸時代の長崎を舞台にしたお話ということで、歴史(日本史)で習った「島原の乱」「踏絵」などの用語が物語に関わってきます。ただ授業で習うよりも、キリシタン弾圧の様子が生々しく、想像以上に残虐に感じることができます。

宗教、教徒に関して、日本人が同じ日本人に対して拷問など、残虐になれるのかと恐怖を感じました。

 

小説としての書きぶりは、古い作品ではありながら、続きが気になってどんどん読ませる筆致で、内容も宗教や歴史についての予備知識はほぼ不要で読みやすいものでした。

 

古い作品だからと、読まないのはもったいないと思える、おすすめできる作品です。テーマ性もあるので多くの方に読んでもらいたいと思える作品でした。