「多様性」の罠 『正欲』(朝井リョウ)
去年読んだコンビニ人間に続き、これもまたすごい小説…。
コンビニ人間、52ヘルツのクジラたち、流浪の月など、最近話題になる本は「多様性」や「マイノリティ」がテーマのものが多い気がする。
この「正欲」もまさにこれがテーマではあるけれど少し違う。
自分には想像もできない趣向や性癖(小児、涙、水など)をもつ人がいるということを考えさせられる。
多様性ってきれいな言葉だけど、すごい便利に使われて本質を見えなくさせる言葉なのかもしれない。「多様性」は「自分の想像の及ぶ範囲での多様性」ってことがよくわかった。当事者からしたら怒りすら湧くのかもしれない。
でもだからといって普通の人(本書で言う、明日死なないことが前提の人)が悩んでいないわけでもない。選択できるからこその苦悩もある。
お互い話し合わないと分からないんだろうな。どちらかが決めつけとか固定観念に縛られていると一緒に生きられない。でも話し合うまでに至れるか。
ぜひ多くの人に読んで欲しい!と思うような一冊でした。