本と珈琲のある暮らし

小説やビジネス書を好んで読みます。読書の感想や日々感じたことなどをここに記していきたいと思います。

この話をどう消化したらいいのか?『破局』(遠野遥)

 

 

 

何だこの物語は…?これが芥川賞なのか…?私はすごい読書家でもなく、何となく気になった本を趣味レベルで読むくらいで芥川賞の意味もよく分かってないですが、これがいわゆる「良い小説」なのでしょうか??

 

以下、感想。

主人公の陽介の恋愛がメインの物語なのですが、彼女には紳士的なんだけど、ラグビーを教える後輩には辛辣だったりと、彼女には優しくあるべきとかラグビーで勝つためには限界を超えてトレーニングしまくるべしとか自分ルールにかなり縛られている感じ。また、考え方が何か機械的、客観的、無関心なように感じる描写が多い。

 

そのためか、ラグビーの後輩から陰口を言われたり、最後には彼女に別れを告げられ通行人の男性に怪我をさせる(殺してしまう?)。他人との肉体的、精神的な距離感を掴み損ねてしまった結果でもあるのかなと思いました。

 

全体を通してこれは意味ある描写なのか?という描写が多い印象で、モヤモヤが残りスッキリはしないが、逆に言えば余白が多い物語で想像で楽しめるのかも。そういう話が好きな人にいいのかもしれないと思いました。私的には嫌いではないが、??な部分が多すぎて消化できてない感じ。

 

直接の描写を避けて読み手に想像されるような話や、虚無感漂う様な話は好きだけれど、何というか物語の中の個々の描写(点)がどこかで線で繋がったり、意味を持つような話であればもっとおもしろいな〜と思えたかも。

ただ私の読み手としてのレベルが低いせいで楽しめてない可能性が大ですが…^^;

この関係に名前はつけられない『流浪の月』(凪良ゆう)

おもしろい。本屋大賞に去年選ばれてなんとなく買ってなんとなく読んだ時より、2回目に読んだ今回の方が断然おもしろかった。

 

あらすじ

小学生の更紗は自由な両親のもとで自由に暮らしていた。しかし父親が急死し母親に見捨てられ伯母さんの家に行ってから、窮屈な暮らしを強いられ、伯母さんの家の息子に嫌がらせを受けるようになる。そんな時、公園でいつも女の子たちを眺めていたロリコンと思わしき男・文(ふみ)に声をかけられる。もう帰りたくないと思っていたためその男に付いていき、2人の生活が始まる。

一見危険な関係に見えるこの出会いが、更紗の運命を大きく変えていくことになる。

 

感想

この本を読んで1番思ったことは、「人がいかに固定観念に縛られているか」ということでした。

 

更紗と文の関係に、その気持ちに名前はつけられません。家族、彼氏、彼女、夫、妻、友達、知人。人と人との関係性を示す言葉。そのどれにも当てはめられない関係。でもその誰よりも深い関係。

 

わたしたちは親子ではなく、夫婦でもなく、恋人でもなく、友達というのもなんとなくちがう。私たちの間には、言葉にできるようなわかりやすいつながりはなく、なににも守られておらず、それぞれひとりで、けれどそれがお互いをとても近く感じさせている。わたしは、これを、なんと呼べばいいのかわからない。

 

更紗と文の物語を全て知っているからこそ感情移入できるけれど、その一部しか知らなかったらきっと理解できないだろうなと思います。それほどまでに自分は「人と人との関係ってこういうもの」とか、「こういう人は絶対こういうことをする」とかいう固定観念に知らずのうちに縛られているということを思い知らされました。

 

例えば、成人の男が女児を攫った、あるいは関係を持ったというニュースを見れば「とんでもない性癖の男だ。どういう教育を受けたのか」「女児が可愛そうだ。今後が心配だ」といった感想を抱く。でもそこで何があって、どんな感情を抱いているかは、本当の意味では当事者しか分からないし、勝手に自分の思考の枠に当て嵌めて考えてしまっている。

 

こうしたことは人への理解を妨げるかもしれない。更紗と文の関係のようにパターン化できない関係だってある。人間ってとことん複雑だ!

自分を過信せずに謙虚に生きよう。

良い文章は書き出す前に決まっている『新しい文章力の教室』唐木 元

ブログを書いてみて思ったこと。それは、

「うまく書けない…。良い文章ってどう書いたらいいんだ?」

 


その思いでこの本を手に取り、読んで得た結論は、「良い文章は書き出す前に決まっている」ということ。今までの私のように、とりあえず書き出してみるというやり方は、目的地もルートも決まってないのに出かけるのと同じでとても無謀でした。


では書き出す前に一体何をすればいいのか?一言で言うと「構造化しておくこと」。もっと言うと「主眼」と「骨子」=何を、どういう切り口で、どのように伝えるか、を明確にしておくことです。


例えば読んだ本の魅力を伝える文章を書く場合、その魅力は何で、それを伝える要素は何か、そしてその要素をどう組み立てれば効果的に伝わるか、というのを論理的にあらかじめ決めてから書き出すということになると思います。


思えば、昔から読んだ本とか映画の感想が「おもしろかった」「つまらなかった」くらいしか言えないなと思っていたけど、その理由はまさにここにあったのか!と思いました。「何が」おもしろかったのかを言語化できてなかった、それが苦手なんだということがよく分かりました。

 

 

 

(おまけ)

さて、この本を読んでみて思ったのですが、

じゃあこの本の内容を踏まえて前に書いた「明け方の若者たち」の感想を自己分析するとどうなるか?ちょっと考えてみました。

 

「まず、登場人物が少なく、ページ数も少なめ、平易な文でとても読みやすいです。」

句読点多くてリズム悪い。最初の点いらない。

これは最初に伝えるべき情報なのか。優先順位低い。最後に補足情報として記した方がいい。

 

「「僕」と「彼女」との恋愛模様がメインになるのですが、こそばゆい…。この大学時代とか新社会人時代に恋愛に夢中になる感じ分かるなぁ(経験ないけど)」

内容をもうちょっと書かないと共感生まれない。

 

「一方で「このままハッピーエンド!とはならないんだろうな〜。何が起こるんだろ?」と思っていると急に明かされる彼女の「秘密」(えー!!って感じでした笑)そして仕事でも葛藤を抱える。

彼女の「秘密」にはちょっとびっくりしましたし、そんなことあるん?と思うところもあるけれど、現代を生きる若者たちの生き様が、なんというか、刹那的で、ノスタルジックで、苦悩葛藤を抱えていてハッピーエンドではないかもしれないけど魅力的に写ります。」

言葉のチョイスがぼやっとしてる。何が魅力的なのかをもっと分かりやすく書かないと共感できない。

 

「内容的にも(ちょこちょこ出てくるワード的にも、RADWIMPSとか)、新社会人から30代くらいの年代の人に1番刺さる内容かなと思います。

著者は2作目も出版済みですし、おそらく今後も「若者」をテーマに小説を書いていくんじゃないかなと思うので、次回作も読みたいですね。」

本文に出てくるワードを少し取り入れたほうが分かりやすいし、言いたいことも伝わる。

 

 

う〜む、あらためて見ると我ながら伝わらない文章だな笑


この本の魅力はどこにあるのか?という一本筋の通った切り口(コンセプトといってもいい)が設定できてない。

また、ネタバレしないようにという制約があるにせよ、もう少し内容を開示して本の魅力を分かりやすく伝えるべき。あとは書く要素の順番と軽重が全く考慮されていないのでメリハリが無い文章になっている。

ただ自分の思ったことを乱雑に述べているだけで、本の魅力を分かりやすく伝える文章にはなっていないなと見直して思った。同時に人を惹きつける文章を書ける人の凄さも実感。

『明け方の若者たち』カツセマサヒコ 感想

 

 

カツセマサヒコさんの『明け方の若者たち』を読んだ感想です。

 

表紙の綺麗な色合いだったり、タイトルの刹那的な感じに惹かれました。

 

著者はカツセマサヒコさん。今作が処女作です。以下のページのインタビューで今作について語っています。

カツセマサヒコさんデビュー小説「明け方の若者たち」 何者かになれなくたっていい |好書好日

 

12月に北村匠海さん主演で映画化もされるそうですね。

映画「明け方の若者たち」公式サイト

 

 

あらすじ

主人公の「僕」は大学の就職先が決まった学生たちの集まり「勝ち組飲み」の場で「彼女」と出会う。

 

この出会いから始まる「彼女」との恋、社会人になってからの「僕」や友人の葛藤といった現代の若者たちの物語が描かれています。

 

 

感想

まず、登場人物が少なく、ページ数も少なめ、平易な文でとても読みやすいです。

 

「僕」と「彼女」との恋愛模様がメインになるのですが、こそばゆい…。この大学時代とか新社会人時代に恋愛に夢中になる感じ分かるなぁ(経験ないけど)。

著者のカツセマサヒコさんはTwitterで「妄想ツイート」なるものを投稿していて人気のようで、その手腕が本書でも遺憾なく発揮されてるな〜と思います。

カツセマサヒコ on Twitter: "お花見中に「ちょっとトイレ」って立とうとしたら好きな子も「あ、わたしも行く」って立って、ほろ酔いでふたり公園歩いてたら「あのさー」「うん?」「告白しちゃダメ?」って言われて。「酔った勢いかあ」って冷静に返そうとしたら「素面じゃ言えないくらい本気で好き」って真顔で言われたことがない"

 

一方で「このままハッピーエンド!とはならないんだろうな〜。何が起こるんだろ?」と思っていると急に明かされる彼女の「秘密」(えー!!って感じでした笑)そして仕事でも葛藤を抱える。

 

彼女の「秘密」にはちょっとびっくりしましたし、そんなことあるん?と思うところもあるけれど、現代を生きる若者たちの生き様が、なんというか、刹那的で、ノスタルジックで、苦悩葛藤を抱えていてハッピーエンドではないかもしれないけど魅力的に写ります。

内容的にも(ちょこちょこ出てくるワード的にも、RADWIMPSとか)、新社会人から30代くらいの年代の人に1番刺さる内容かなと思います。

 

著者は2作目も出版済みですし、おそらく今後も「若者」をテーマに小説を書いていくんじゃないかなと思うので、次回作も読みたいですね。