本と珈琲のある暮らし

小説やビジネス書を好んで読みます。読書の感想や日々感じたことなどをここに記していきたいと思います。

言葉の力『本日は、お日柄もよく』(原田マハ)

目次

 

 

 

意外なストーリーと読みやすさ

今回読んだ本は原田マハさんの「本日は、お日柄もよく」。

 

わたしがよく見るYouTubeチャンネル「もりおルーティン」で投稿主のもりおさんが好きな小説と言っていたのが頭に残っていたので読んでみました。

もりおるーてぃん - YouTube

 

著者の原田マハさんは、ゴッホピカソなどの著名なアーティストを主人公にした作品が有名な方ですよね。「暗幕のゲルニカ」や「たゆたえども沈まず」とか。好きな作家さんです。

 

 

 

 

本書は、すごく読みやすいです。登場人物もシンプルだし、心理描写もシンプル。

 

原田マハさんといえば、前述のような歴史背景も絡んだアートファンタジーしか読んでなかったので、イメージが変わりました。こういう小説も書かれているんだなーと思いました。

 

だいたいのあらすじ

製菓会社の事務として無難に働く主人公のこと葉は友人の結婚式でスピーチライター・久遠久美の祝辞のスピーチを聞き心動かされる。

 

その後、久遠のアドバイスを受けながら友人の結婚式のスピーチをしたり、社内の広報部門へ異動など転機を迎える。

 

そして幼なじみの今川厚志が衆院選に立候補しそのスピーチの手伝いをすることになったことをきっかけに会社を辞めてスピーチライターになることを決心する。

 

果たしてこと葉はスピーチライターになれるのか、そしてこと葉と厚志は言葉の力で当選を成し遂げることができるのか…。

 

言葉の力

分かりやすくシンプルなストーリー。余計な描写もなくストレート。感動的なストーリーがストレートに響いてきて、すごく読後感がいいです。本を読むのが苦手な人でもとっつきやすいと思います。

 

読んだ後はスピーチの力、言葉の力について考えさせられます。

たとえば同じ内容のことを話すにしても、どう話すかで伝わり方って全然違いますよね。違う人が話せば違く聞こえるし。

 

それは「話す」ということが、単に音を発することではなくて、どんな声色で、どのくらい間をとって、どのくらいの大きさで、どんな言葉を選んで、どこを見て話すか、などによってぜんぜん違うものになるということなんだと思います(当たり前だけど)

 

だから祝辞のスピーチにしても、政治家の演説にしても、職場のミーティングにしても、普通の会話にしても、話す力によっては人の心を大いに動かせるし、心を惹きつけることができるんだと思います。

 

心惹かれる話し方ができるよう、わたしもちょっとでも精進したいと思いました。

まずは職場のミーティングくらいで実践していければ!

 

 

 

本を読んでもすぐ忘れてしまうのはなぜなのか?

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本を読んでもすぐ忘れちゃう

読書してもすぐ内容を忘れてしまう。

 

読んでいる時は「なるほど!」と思っても、気付いたら忘れてしまったり、自分の生活や仕事に生かせていなかったりする。

 

そんな風に思うことがよくありませんか?

 

最近私もよく本を読むんですが、

 

読んだことが全然覚えてなかったり、身になってないな…と思う

そうだ!読書術の本を読んでみよう!

あれ?読書術の本で読んだ内容も気付いたら覚えてない…

読書のモチベ低下

以下くりかえし

 

という負のスパイラルに陥っています…。

同じ悩みをもつ方ってけっこう多いのではないでしょうか。

 

ちょっとこの辺でそんな自分とはいい加減おさらばすべく、本を読んでも忘れてしまうメカニズムとその解決策を考察しました。

 

なんですぐ忘れてしまうのか

そもそもなんで読んだ本の内容をすぐ忘れてしまうんでしょうか?読んでいる時は「なるほど!」とか「めっちゃいい話やん」とかいろいろ思っているのに…。

 

原因はいくつかあると思いますが、逆に忘れないことは何で忘れないのかを考えてみると

 

・毎日なんらかの形で触れる情報だから

・めっちゃ嬉しかった(またはトラウマな)ことだから

・実体験したことだから

 

といったことが理由として考えられます。

 

この逆を考えてみると、なんで忘れてしまうのかの一番大きな理由は

 

一回読んだきりなので脳がそれを大事な情報だと認識せずに長期記憶できない

 

ではないかと思います。

 

じゃあどうすれば読んだ本の内容を「大事な情報」にできるのか?ここが問題です。

 

 

どうすれば忘れないようにできるのか

ポイントは「繰り返し」「能動的」の2つだと思います。

 

例えば

・仕事で使うパソコンの操作

・職場の人の名前

・得意料理のレシピ

・家族の誕生日

 

これらは意識してないのに絶対忘れないですよね。

 

これらに共通しているのは、意識的でも無意識的でも

 

・毎日もしくは定期的に繰り返す(繰り返される)こと

・能動的(主体的)に行っていること

 

です。

 

つまり読書においてもこの「繰り返し」と「能動的」をうまく取り入れられれば、本の内容をすぐに忘れてしまうということもなくなるのでは?と思います。

 

では具体的に何をするか

では最後。具体的にどうするか。

 

まず「繰り返し」。

具体的な方法としては、

 

・同じ本を繰り返し読む(ただし漫然と読むのではなくその都度、目標を変えて読む)

 

・本を読んだ感想を何らかにまとめておいて定期的に読み返す。

 

・本を読んだ感想を誰かと共有する。

 

などがあるかと思います。

 

 

次に「能動的」。

これはマクロ的なものとミクロ的なものがあると思います。

 

マクロ的とはどういうことかというと、本を能動的に読むための「全体的な」視点という意味です。

 

具体的な方法としては、

 

・本を読む前に装丁や目次から内容を予想して、読み終わった後検証する。

 

・本を読む前にその本で得たい知識を考えておき、読み終わった後に達成度を検証する。

 

・内容的な構成を予想しておき、読んでいる時は常に頭の中に置いておくイメージをもつ(読書中に迷子にならないように地図を持っておくイメージ)。例えばこの本は「先にこの結論があって徐々にその根拠を述べていく構成だな」とか。

 

 

次にミクロ的なものですが、これは個別の文章を実際に読んでいる時の視点という意味です。

 

具体的な方法としては、

 

・ただ文字面を追うだけにならないよう「読む=作者と会話する」という意識をもつ。例えば作者に質問する、議論する想像をする。疑問をもったら調べてみる。自分に身近な例で例えてみるなど。

 

 

忘れないだけではなく思考力のトレーニングにもなる

「能動的」に、前のめりに読書をすることで、本の内容を忘れにくくなるだけでなく、思考力のトレーニングにもなると思います。

 

作者の言っていることを必ずしも鵜呑みにせずに読めば、常識を疑う力や、質問するトレーニングになります。

 

本の内容の構成を予想したり整理したりしていれば、全体を俯瞰してみる力、本質を見抜いたり見失わない力をつけるトレーニングになります。

 

このようにただ本の内容を忘れにくくなるだけでなく、思考力を鍛えることにもつながるので一石二鳥です。

 

とはいえ本の読み方は人それぞれ

とはいえ、本の読み方を他人にあれこれ言われるの窮屈ですよね。読書がストレスになってしまっては元も子もありません。

 

私はめんどくさがりで、天邪鬼なので、あれやれこれやれと細々と人に指示されるとやる気を無くしてしまいます。

 

なので、巷にはいろいろな読書術があるとは思いますが、最終的には自分で考えて、納得感がある自分のスタイルを、アップデートしながら確立していくのが一番かなと思います。

 

 

おすすめの本(参考図書)

この記事においておおいに参考にさせていただいたのが、西岡壱誠さんの『東大読書』という本です。

 

「現役東大生」の記載から、「学生の書いた本か…。ちょっと期待薄だな」とか思ってましたが、東大の書評サークルの長を務めた方らしく、読書を極めている人はこういう読み方をするのか、とても勉強になりました。

 

「これは難しい問題ですね(`・ω・´)」って言って終わりがちなのなんとかしたい『自分の頭で考える日本の論点』(出口治明)

ライフネット生命創業者の出口治明さんの本『自分の頭で考える日本の論点』を読みました。

 

 

 

 

いや〜勉強になる本でした。よく言われる「憲法9条は改正すべきか?」とか「年金制度はほんとに破綻するのか?」とか「生活保護orベーシックインカムか?」とか、いろーーーんな難しい問題に対しての出口さんなりの考えとそれに至る考え方が書かれています。

 

 

個々の問題というよりも、問題に対して

 

①その問題をどう理解して(自分なりの分類をして)

→例えば、正解のあるもの、無いもの、正解はあるけど意見が割れてしまうもの、具体的なものと抽象的なものなど

 

②基礎知識や調べた知識を使い

→知識人になる必要はなくて必要なことはGoogleでその時に調べればいい。より必要のは考える力の方。

 

③タテ、ヨコ、算数(数字・ファクト・ロジック)で考えて自分なりの答えを出すか

→タテ=時間軸、先人たちの試行錯誤の結果である歴史、ヨコ=空間軸、周りや世界での試行錯誤を参考にする、そして数字・ファクト・ロジックを用いて考える。

 

が「考える」ということの基礎なんだな〜と勉強になった。

 

 

本を読みながら日本のさまざまな問題についてあらためて考えて、その後に出口さんの考え方を見ると、自分は「二者択一的に、または極端に答えを出そうとしがちだな〜」とか「知識を覚えていることが正義になっちゃってるな〜」とか、それこそ「これは難しい問題ですね(完)」としか言えなかったりと、自分の思考のクセとかダメなとこが少し見えたような気がします。

 

日頃から自分なりの考え方を訓練して、反射的に「これは難しい問題ですね(`・ω・´)キリッ」って言わないように意識してみよう…。

 

 

普通ってなんだ?『コンビニ人間』(村田沙耶香)

 

 

 

これは、すごい小説だ。

ページ数も少なく読みやすそうな本だな〜とか思って読んだが驚いた。

たしかに読みやすいしすぐ読める。

ただ内容が衝撃的。

 

「普通」という感覚が麻痺しそう。いかに自分が「普通」に生きることに縛られているかを突きつけられるような気分。

 

女性、三十代半ば、コンビニアルバイト、独身、彼氏なし、身体は健康

 

例えば自分が大学生でコンビニでアルバイトをしていて、おなじコンビニで働くこんな人に対して、どういうイメージをもつか?

 

「あの人はちょっと変わってる、おかしい人」

 

と口に出さないまでも思う。たぶん同じコンビニ店員の間でも「あの人変わってるよね」とか「コンビニ人間なんだよ」とか「何が楽しくて生きてるんだろうね」とか噂してると思う。

 

でも我々の思う「普通」の人のイメージっていつ、どのように形成されたんだろう。こういう人は「普通じゃない」って何で思ってしまうんだろう。人なんてそれぞれ違うとか人権とかよくいうクセに何で「普通であること」を強いるんだろう。学校や職場でのイジメもそう。普通でない人をあげつらうんだろう。

 

著者の村田さんがどういう意図やコンセプトでこの小説を書いたのか分からないけど、そういう「普通」に対する違和感についての、直球の問題提起をぶつけられた気がした。

かっこいい大人になりたい『具体と抽象』(細谷功)

 

具体例を使って分かりやすく話してくれる人ってかっこいいなあ…

 

 

 

と、普段よく思います。

 

というのも職場でそういう人がいます。

 

その人の性格とか趣味とかなんでもいいんですけど、要はその人に合わせた具体例を設定して、分かりずらいことを説明してくれるのです

(例えば君の好きな野球で例えると…とか)

 

 

 

そういう人って

「具体」と「抽象」の行き来がスムーズ

なんだろうなあ…と思っていて、それがかっこよさ、というか説明力の源泉なんだろうなと思ってすごく憧れております。

 

 

私もそういう仕事ができてかっこいい人になるべくそういう力をつけたいなということで本を読んで勉強してみることにしました。

 

 

 

細谷功さんの「具体と抽象」という本です。

手に取ってみると結構薄めの本で、数時間で読めるくらいのボリュームです。

 

 

世界を「具体的」「抽象的」に見るためのヒントが各章ごとに展開されています。各章も短くて本当にサラサラと読めてしまいました。

 

読んでみると、全体を通して

 

「具体」は分かりやすくて「抽象」は分かりずらいというイメージがないか?共通点を抜き出して応用可能な形である「抽象」をもっと使いこなそう!

 

というメッセージを感じました(個人の感想です…)

 

個人的にあ〜なるほどね〜と共感したのは、

「第8章 本質: 議論がかみ合わないのはなぜか」

 

議論かみ合ってないな〜とか、意見対立してるな〜というシチュエーションのとき、その理由は何かを考えると一方が「具体」、一方が「抽象」に着目してることってけっこうあるなと思いました。一方が「表象」、一方が「本質」と言ってもいいかもしれませんが。

 

そういう視点で物事を見ることができれば、状況を俯瞰して整理できたり、状況によってどちらの視点で考えるのが適切か分かったりといったことができるな!という感じがしております。

 

日頃から具体と抽象の二つの視点で物事を見るよう心がけてみよう。そのうち世界が変わって見えるかな🤔

 

我々はどんな未来を残すのか?『シン・ニホン』(安宅和人)

 

 

どんな内容?

著者は安宅和人さん。YahooのCSO

まだ読んだことがないけどベストセラー『イシューからはじめよ』の著者。

国の審議会などにも多数参画している方です。

 

 

 

本書にて書かれている内容は、私の印象に残っていることを中心にざっくり言うと、

  • AI×データ社会において、指数関数的に社会が変化している。そこには地政学的、環境的な要因も掛け算されてさらに変化が加速している。
  • これから必要となる人材とは、スポンジ(知識の吸収)ではなく、気づき(知識を吸収し組み合わせて化学反応を起こす力)。そして突出したものを持ち変革を起こせる「異人」。
  • 日本の出遅れと課題は定年でシニア層の経験を切ってしまうこと、女性の力が使えていないこと、若者への投資が少ないこと、科学技術等の伸ばすべき分野への投資ができておらずひとまず技術も育ちづらいこと等。
  • 我々はどんな未来を残すのか?を考えなくてはならないというメッセージ。

 

 

 

感想

私自身が思ったことは大きくふたつです。

 

ひとつは、自分の自己成長の方向性として、単にいろいろな知識をインプットするのではなく、インプットした知識を自分の中の既存の知識を組み合わせて気づきを得るということを意識して訓練していきたいと思いました。

 

もうひとつは、これからの日本大丈夫?ということです。

今後の政治を見る際に「過去や今ではなく未来にどのくらい投資しているか?」という視点をもちたいと強く思いました。

 

本書は400ページくらいありちょっと尻込みしてしまうボリュームですが、いろいろな気づきを得ることができました。

 

私は基本図書館で本を借りて読んでいるのですが、この本はあらためて買って丁寧に再読したいと思える一冊でおすすめです。

愛を知らないことの切なさ『ファーストラヴ』(島本理生)

 

第159回直木賞受賞作。

 

あらすじ

アナウンサー志望の女子大生・環奈が父親を包丁で刺し殺してしまう。臨床心理士の真壁由紀は環奈についての小説執筆の依頼を受け、彼女との面会して話を聞きながら事件の真相や彼女の生い立ちに迫っていく。真相を追う中で、環奈の事件の弁護を担当する大学時代の同級生で夫の弟でもある迦葉との関係にも変化が現れる。

 

感想

読んでいくほどに落とし所(オチ)がどうなるのかがどんどん気になるような展開だった。派手さがある話ではないかもしれないが、環奈の生い立ちが切なくて、家族の愛情だったり恋人の愛情を受けられないことがすごく悲しい。ほんとに誰か一人でいいから環奈に愛情を注げる人がいれば、また違ったんだと思う。けれど最後には環奈はもう一度人生をやり直せるだろうなという希望があったのが救いに感じられた。

 

あと途中で環奈の話から、由紀の話に変わって展開していくところはその転調具合にグッと引き込まれた。環奈の話だけではなくて、由紀の話もありそれが物語に深みを与えていたと思う。

 

「ファーストラヴ」というタイトルとは全然違うイメージの話だけど、家族愛や愛情って何だろう?と考えさせられるようなお話でした。